「あの人、辞めたあともAI使えるままじゃない?」。退職の手続きで、パソコンや鍵の返却は忘れなくても、AIツールのアカウントは抜け落ちがちです。個人のメールで登録し、会社のカードで払っている形が多いからです。放置すると何が起きるか、そして棚卸しの手順を整理します。

放置すると起きる3つのこと

1. 情報が見え続ける。 AIとの会話履歴には、商品説明の下書き、仕入れ先とのやりとり、まだ出していない企画が残っています。アカウントが生きていれば、辞めた人が自宅からそれを開けます。悪意がなくても、転職先で流用される、といったことは起こりえます。

2. 課金が続く。 月額制のAIツールは、人が辞めても席は自動で減りません。3人分の契約のうち1人が退職して半年そのまま、という例は珍しくありません。

3. 資産が取り出せない。 逆の困り方もあります。直売所の商品説明文をAIに作らせていた担当者が辞め、蓄積した指示文や読み込ませた資料が本人の個人アカウントに閉じ込められる。会社は費用を払っていたのに、中身にさわれません。

図1: 退職者のAIアカウントを放置すると起きる3つのこと

棚卸しの手順は4ステップ

ステップ1: 契約を洗い出す。 カードの明細と請求メール(「receipt」「ご請求」「Plan」で検索)から、AIツールの名前を全部書き出します。担当者の記憶より、お金の記録のほうが確かです。

ステップ2: 持ち主を書く。 ツールごとに「登録メールは誰のか」「支払いは誰のカードか」「管理者画面に入れるのは誰か」の3欄を埋めます。1欄でも空くツールが、要注意の1件です。

ステップ3: 止める前に中身を移す。 退職者や不在者の席は、いきなり削除しないこと。会話履歴、保存した指示文、読み込ませた資料を書き出し、会社の共有フォルダに移してから止めます。書き出しの場所は、ヘルプで「エクスポート」を探します。

ステップ4: 止める・減らす。 席の削除か人数の変更をし、共有で使っていたアカウントならパスワードを変え、二段階認証を設定し直します。

図2: AIツール契約の棚卸し4ステップの流れ

現場目線では「退職の日」より「月に1回」

この作業は、退職の日に慌てるより、月1回の棚卸しに組み込んだほうが楽です。人が辞めるときは他の手続きで手一杯だからです。

もう一つは、登録の入り口をそろえることです。個人メールでの登録を禁止するより、「会社のメールで登録して、一覧に1行足す」を公認の手順にすると、棚卸しの対象から漏れなくなります。以前の記事「生成AIの料金プラン比較の落とし穴」でも触れたとおり、個人向けプランの寄せ集めは、管理者不在と引き継ぎ不能を後から生みます。

明日やれる一歩

今月のカード明細と請求メールを開き、AIツールの名前を紙に書き出してください。名前の横に「誰のアカウントか」を即答で書けなければ、それが最初に確認する1件です。一覧が1枚あれば、あとは月に一度眺めるだけで、AIは安心して使い続けられます。