指定管理の報告書、AIが便利なのに危ういワケ

道の駅や観光施設の指定管理者は、毎月・毎年、自治体に来館者数や売上、イベント実績をまとめた報告書を提出する。様式が決まっていて文章量も多いため、AIで下書きを作れば作業時間はかなり削れる。ただし報告書は自治体の内部資料としてそのまま議会や住民説明に使われることがあり、「誰がどう書いたか」の線引きが曖昧なまま提出すると、あとから発注者側との認識のズレが表面化しやすい。

ありがちな失敗シナリオ

新潟のある道の駅を想定した例だが、月次報告のコメント欄をAIに書かせたところ、来館者数が微減だった月に「堅調に推移」という言葉が入ってしまった。担当者は忙しさから見出しだけ確認して提出し、後日自治体の担当課から「数字と表現が合っていない」と指摘を受けた。AI自体の誤りというより、AIが作った文章を人が最終確認せずに出したことが原因だった。6次産業の加工品販促報告で「大変好評」「大変喜ばれている」といった主観的な表現がそのまま並んでしまうケースも、同じ構造で起きやすい。

図1: 数字と表現がずれた報告書の失敗パターン3つ

発注者との合意の取り方・3つのポイント

トラブルを防ぐ鍵は、AIを使うこと自体を隠さず、先に発注者と認識を合わせておくことにある。

  1. どこにAIを使うか一言伝える — 「文章の下書き作成にAIを使っている、数値は必ず人が確認している」と担当課に伝える。禁止されていることは少なく、先に言えば警戒されにくい。
  2. 数値と事実は人が最終確認するルールを残す — 打合せの議事録やメールに一文残しておくと、「AIが書いたから」で済ませられない体制になる。
  3. 表現のトーンを事前にすり合わせる — 「堅調」「好評」など評価を含む言葉は、根拠になる数字とセットでしか使わないと決めておく。

図2: 発注者との合意までの3ステップ

明日やれる一歩

次に報告書を提出する前に、担当課の窓口へ「文章の下書きにAIを使っている、数値は提出前に必ず人が確認している」とひと言伝えてみる。それだけで、あとから使い方を問われて信頼を落とすリスクを減らせる。

自治体側も生成AIの扱いについて明確なルールを持っていないことが多い。先に使い方を開示する指定管理者の方が、あとから対策を求められるより「きちんと管理されている」と受け取られやすいというのが、現場を見ていての実感だ。AIは怖いから使わないのではなく、使い方を先に合わせておけば、報告書づくりの負担は着実に減らせる。