「社内だけ」の線は、思ったより早く消える
AIツールを導入するとき、「外部には出さない。社内だけで使うから安心」と考える経営者は多いです。ただ現場で見ていると、この「社内だけ」という線は、驚くほど簡単に越えられていきます。
きっかけは悪意ではなく、善意の共有です。AIが出した売上分析の画面をスクショして「参考まで」とLINEで送る。取引先との条件をAIに要約させ、その結果を個人のフリーメールに転送して自宅で読む。どれも仕事熱心な人ほどやりがちな行動です。
情報はAIツールの中にとどまっているのではなく、スクショや転送のたびに「別の場所」へコピーされています。その行き先を、会社として把握できているでしょうか。
道の駅で起こりがちなシナリオ
たとえば道の駅で、出荷者ごとの売上と手数料率をAIに読み込ませて分析したとします。ここまでは社内利用です。
ところが担当者が、分析画面をスクショして自分のスマホに保存し、出荷者への説明のためにLINEで送る。そのスクショに、送る相手とは別の出荷者の手数料率まで映り込んでいた。こうなると「社内だけ」はもう終わっています。
私が現場で感じるのは、問題は「AIを使ったこと」ではなく「AIの出力が、他の書類より軽く扱われること」です。紙の帳票なら持ち出しに気を使う人も、画面のスクショだと平気で送ってしまう。出力が手軽なぶん、扱いも手軽になるのです。
「行き先」を先に決めるのが最小の対策
対策は難しくありません。「社内だけ」という気持ちの線ではなく、「この情報はどこに置いてよいか」という置き場所の線を先に決めておくことです。
- 顧客名・単価・手数料など個別の数字が入った出力は、社用の共有フォルダ以外に置かない
- スクショを送る前に、映り込んでいる情報が「送る相手に見せてよいもの」だけか確認する
- 個人のLINEやフリーメールへの業務転送はやめると決め、代わりの連絡手段を用意する
明日やれる一歩
明日の朝礼で、AIの出力をスクショや転送した経験があるか、スタッフに聞いてみてください。責めるためではなく、実態を知るためです。「あります」という答えが出たら、それが置き場所のルールを決める出発点になります。
AIは、置き場所さえ決めれば、道の駅や観光の現場でも心強い道具になります。怖がって遠ざけるより、情報の行き先を一緒に描いておくほうが、ずっと安全です。