議事録の自動化、その一歩手前にある落とし穴

図1: 会議の録音を外部AIで文字起こしする流れに潜む「同意を取っていない」「データの行き先を把握していない」という2つの落とし穴

会議を録音してAIで文字起こしする。議事録づくりの手間が大きく減る、おすすめの使い方です。ただ、その一歩手前に見落とされがちな論点があります。録音される側の同意と、音声データの行き先です。

録音データには、参加者の声と発言そのものが入っています。文字起こしAIに渡すということは、その音声を外部のサービスに預けるということです。本人に知らせず録音し、外部サービスにアップロードしていた——これが後から分かったとき、悪意がなくても「勝手に録られていた」という事実だけで信頼は大きく損なわれます。社内なら注意で済んでも、取引先や地域の関係者が相手なら、その後の関係に響きます。

ありがちなシナリオ

道の駅の出店者会議を想像してください。事務局が議事録のためにスマホで録音し、無料の文字起こしアプリにかけた。ところが会議では、ある出店者の売上の話や、公表前の新商品の話も出ていた。録音を知らなかった出店者から「あの話、どこに保存されているのか」と聞かれて、答えられない——。

このシナリオ、問題が二重になっています。録音自体を知らせていなかったこと、データの行き先を把握していなかったこと。どちらか一方でも防げていれば、事故にはなりにくいのです。

押さえたい基本3点

  • 録音前に一言伝える: 「議事録作成のため録音します。よろしいですか」。この一言で、無断録音の問題はほぼ消えます。社外の人が一人でもいる会議では必ず。
  • 文字起こしサービスのデータの扱いを確認する: 音声が学習に使われるか、どこに保存されるか。無料プランは特に規約と設定の確認を。
  • 保管と削除のルールを決める: 議事録が確定したら音声は削除する、など。録音は目的を果たしたら手放すのが基本です。

現場からの視点

図2: 録音前の一言宣言がない会議とある会議の比較。宣言があると会議が記録前提になり、発言の整理と決定事項の明確化につながる

同意の一言を「言い出しにくい」と感じる方は多いのですが、続けてみると逆の効果があります。「録音して議事録にします」と宣言すると会議が記録前提になり、発言が整理され、決定事項が明確になるのです。声かけは相手への配慮であると同時に、会議の質を上げる合図でもあります。

もう一つ。同意を取るとは「録音していいですか」だけでは半分です。「データはこのサービスに保存され、議事録の確定後に消します」と聞かれて答えられて、はじめて説明できたことになります。同意の準備とは、マイクを向ける前にデータの行き先を自分が把握しておくことなのです。

明日やれる一歩

次の会議の冒頭で使う「録音の声かけ」の文言を、今日決めておきましょう。例:「議事録作成のため録音し、AIで文字起こしします。音声は議事録の確定後に削除します」。この一文をメモしておくだけで、録音をめぐる気まずさと事故の芽は、ほとんど摘めます。文字起こしの便利さは、そのままで使い続けられます。