AI翻訳は「下書き」として優秀、そのまま送るのは危うい

海外のお客様から英語や中国語で問い合わせが届いたとき、AI翻訳を使えば返信文が数秒で形になります。道の駅や観光施設、農産物の直売所でも、この便利さはもう手放せません。ただ、翻訳文をそのまま送るのは、校正なしで外国語パンフレットを印刷するのと同じです。AIの訳は文法的には整っていても、「意味が逆」「言い回しが失礼」「固有名詞が別の言葉に変わっている」という落とし穴が残ります。

図1: AI翻訳をそのまま送ったときに起きやすい3つの失敗

現場でありがちな3つの失敗

一つ目は否定と肯定の取り違えです。「予約なしではご利用いただけません」が「予約なしでご利用いただけます」と訳されることは珍しくありません。お客様が来てから断ることになり、信頼を損ねます。

二つ目は地名・商品名の勝手な意訳です。新潟の地酒の銘柄や、道の駅で扱う伝統野菜の名前が、AIによって一般的な単語に置き換わることがあります。海外の方が現地で検索しても見つからず、案内として機能しません。

三つ目は敬意の温度差です。日本語の「恐れ入りますが」を直訳すると相手の文化では回りくどく、逆に用件だけの英文はぶっきらぼうに感じられることがあります。

私自身、温泉案内の英訳をAIに任せたとき、「雪見風呂」が「雪を眺める風呂」ではなく「雪でできた風呂」に近い表現になっていたのを見たことがあります。日本語を知る人が読めばすぐ気づく違和感でも、AIは自信たっぷりに出してきます。

送信前に見る3点チェック

翻訳の良し悪しを完璧に判断するのは難しくても、次の3点なら英語が苦手でも確認できます。

  1. 逆翻訳で意味を戻す: 訳文を別の翻訳ツールで日本語に戻し、元の意図と一致するか読む。否定・数字・日付・金額のずれを重点的に見る。
  2. 固有名詞を目視で照合: 地名・商品名・施設名が公式の英語表記になっているか。自社で「英語表記の一覧」を作っておくと毎回迷いません。
  3. 一文添えて人間らしさを補う: 「ご質問があればいつでもどうぞ」など短い定型文を自分の言葉で加える。機械的な印象がやわらぎます。

図2: 送信前に見る3点チェックの流れ

明日やれる一歩

明日、自社でよく使う固有名詞を10個選び、英語表記をメモにまとめてください。AIに翻訳を頼むときに「この表記を使って」と一緒に渡すだけで、勝手な意訳の多くを防げます。

AI翻訳は、海外のお客様との距離を縮める心強い道具です。「送る前に3点だけ見る」という習慣をつければ、少人数の現場でも安心して使い続けられます。