「新潟県の観光客は近年どのくらい増えていますか?」とAIに聞くと、「○○調査によると前年比△%増」といった数字が、出典らしき名前つきで返ってきます。企画書や補助金申請書に、そのまま貼りたくなる場面です。今回は、AIが引用した統計・調査データの「元をたどる」を習慣にする話です。
AIの数字は「それっぽい統計」になりやすい
AIは、資料を開いて数字を読み上げているわけではありません。学習した文章の中で「調査名・年・数字」がよく並ぶ形を再現しているので、調査名は実在しても数字がずれていたり、そもそも存在しない調査名が混じったりします。さらに、実在する調査の数字でも、対象や期間の定義が違えば意味が変わります。「道の駅の利用者」と言っても、レジを通った人数なのか駐車場の台数からの推計なのかで、数字はまるで別物になります。
ありそうな失敗:申請書の「根拠データ」
6次産業の加工品で補助金を申請するとき、「市場規模は年○%成長」という一文をAIの回答から転記したとします。審査員に「この数字の出典は?」と聞かれ、答えられなければ、数字を使った根拠の部分がまるごと信用を失います。観光協会の企画書で「訪日客の△割がこの地域に関心」といった数字を載せ、あとで元の調査が見つからず差し替えに追われる、という展開もありそうです。
元をたどる4ステップ
数字を使う前に、次の順で一次資料までたどってください。
- AIに出典を聞き返す:「この数字の調査名・発行元・公表年は?」と質問する。答えがぶれたら赤信号です
- 調査名で検索し、一次資料を開く:まとめ記事ではなく、観光庁や新潟県、農林水産省など発行元のページやPDFを直接開く
- 数字と定義を照合する:同じ数字があるか、そして対象・期間・母数が自分の使い方と合っているかを見る
- 数字の横に出典を書く:「(出典:△△調査 2025年、発行元名)」を文書内に残す。あとで誰が見ても再確認できます
「出典が書けない数字は載せない」と決める
新潟で中小企業のAI活用を支援していて感じるのは、数字の裏取りは「疑い深さ」より「ルール」で回るということです。たどって出典が見つからなければ、その数字は削るか、「増加傾向にある」のような傾向表現に言い換える。逆に、たどって一次資料が見つかれば、AIの回答は「探すべき統計の名前を教えてくれる入り口」として十分に役立ちます。数字を出す仕事ではなく、数字の在りかを教えてくれる相手だと考えると、付き合い方が落ち着きます。
明日やれる一歩
手元の企画書や提案書から、数字が入った一文を1つ選び、その横に出典を書けるか試してください。書けなければ、AIに「この数字の出典は?」と聞いて、一次資料まで4ステップでたどってみる。一度たどった数字は次からも使い回せるので、社内に「出典つきの数字」が少しずつ貯まっていきます。