AIが得意なのは「文章」、苦手なのは「計算の保証」

見積書や請求書の作成にAIを使う会社が増えてきました。品目の説明文を整えたり、書式を揃えたりする作業は確かに速くなります。ただ、ここで押さえておきたいのは、生成AIは「もっともらしい文章を作る道具」であって、電卓や表計算ソフトのように計算を保証する道具ではないという点です。

たとえば、道の駅の直売所が地元の加工品を10品目まとめて卸すときの見積書をAIに頼んだとします。単価と数量を渡して「合計を出して」と指示すると、9品目分だけ足して合計を出したり、税込と税抜が途中で入れ替わったり、「1,980円」を「1,890円」と書き写したりすることがあります。文章としては整っているので、ぱっと見では気づきにくいのが厄介なところです。

図1: AIが得意な「文章・体裁」と、苦手な「計算の保証」を分けて考える

実際にありそうな3つの失敗

現場で起こりやすいパターンを整理すると、次の3つに集約されます。

  1. 合計の計算ミス: 明細は合っているのに、足し算の結果がずれている
  2. 数字の転記ミス: 前回の見積書を参考にさせたら、旧単価が混ざった
  3. 税率の扱い違い: 消費税8%と10%が混在する伝票で、税率をまとめて計算した

とくに6次産業の商品は、加工食品(軽減税率8%)と手提げ袋や器(10%)が同じ伝票に並ぶことが珍しくありません。AIはこの区別を「知っている」ように振る舞いますが、指示に含まれていなければ一律で計算してしまうことがあります。

「AIに計算させない」体制をつくる

私が現場で勧めているのは、AIと表計算ソフトの役割分担です。数字の計算は表計算ソフトが担い、AIには「文章と体裁」だけを任せる。この線引きをするだけで、数字ミスの多くは防げます。

具体的には、次の3点をチェック表にして、書類を出す前に人の目で確認します。

  • 合計欄を、表計算ソフトか電卓でもう一度計算した
  • 単価を、今期の価格表と1品目ずつ突き合わせた
  • 税率の区分(8%・10%)を品目ごとに確認した

図2: 金額書類を出す前の3点チェック(合計・単価・税率)

チェックは「作った本人以外」がやるのが理想ですが、少人数の会社では難しいこともあります。その場合は、翌朝に見直すなど、時間を置くだけでも見落としは減ります。金額の書類は、一度出してしまうと訂正の手間と信用の両方にひびきます。だからこそ、数字だけは人が最後に握る、という線を引いておきたいのです。

明日やれる一歩

明日、AIで作った見積書や請求書が1枚でもあるなら、合計欄だけ電卓で叩き直してみてください。それだけで「AIの数字をそのまま信じない」という習慣の第一歩になります。AIは怖い道具ではなく、役割を決めて使えば、書類作成の時間を確かに減らしてくれる相棒です。