食品の現場でAIの誤りが危ない理由
AIは文章を整えるのが得意ですが、事実を確かめているわけではありません。もっともらしい文面のまま、原材料や栄養成分を間違えることがあります(ハルシネーションと呼ばれます)。
献立の文案なら書き直せば済みます。しかし食品表示は、アレルギーのある方の健康に直結します。えび・小麦・そば・卵・乳などの書き漏れは、商品回収につながりかねません。
道の駅の加工品で起きそうな失敗
新潟の道の駅で、地元産の米粉を使った焼き菓子を売るとします。レシピをAIに入れて表示案を頼むと「小麦不使用」と書かれて返ってきました。ところが実際には、仕入れた調味料や粉ミックスに小麦や乳成分が含まれていた、という場面です。
現場で感じるのは、誤りの多くが「書いてあること」ではなく「書かれていないこと」にある点です。AIは入力された情報の範囲でしか考えられません。仕入れ品の副原料や、同じ製造ラインで扱う他の商品は、こちらが伝えない限り見えません。
栄養成分の数値も同じです。AIが出す数字は、成分表の値と食い違うことがあります。観光客向けに商品説明を作るときも、産地や効能の言い切りは要確認です。
献立の場面でも似たことが起きます。給食や食堂の献立をAIに作らせると、栄養バランスは整って見えても、地域の行事食で使う食材のアレルゲンが考慮されていないことがあります。たとえば、そばやくるみを使う郷土料理を「代替なし」で組み込んでしまう、といった例です。つまずきやすいのは、見た目が整っているほど「確認済み」と思い込む点です。体裁の良さと正確さは別のものとして扱いましょう。
明日やれる一歩
AIの表示案や献立を使う前に、次の3点だけ照合してください。
- 原材料:仕入れ先の規格書と一字ずつ見比べる
- アレルゲン:規格書の記載と、製造ラインの共有を確かめる
- 栄養成分:AIの数字は仮置きとし、成分表や検査結果で確認する
照合した結果は、日付と担当者名を添えて紙かデータで残しておくと、後から経緯を説明できます。仕入れ先が配合を変えたときも、この記録があれば見直す箇所がすぐ分かります。
迷う点は、保健所など管轄の窓口へ相談すると安心です。
AIは下書きを早く作る道具として、とても役に立ちます。確定するのは人、という線引きさえあれば、安心して使えます。