「事務所のパソコンでAIチャットを開くと、前に誰かが作った商品説明の下書きが残っていて助かる」。新潟の道の駅でよく聞く話です。ただ、その便利さが「1つのIDを全員で使う」ことで成り立っているなら、立ち止まってほしいのです。
「履歴を共有する」と「アカウントを共用する」は別の話
会話履歴を社内で共有すること自体は良いことです。問題は共有の「やり方」。出力を渡すのか、ログインそのものを回すのか。ここが分かれ目です。
アカウント共用で起きる4つのこと
1. 見せるつもりのない会話まで見える。 店長が「遅刻の多いパートさんへの注意の仕方」をAIに相談したとします。翌朝レジのパソコンでその履歴を開くのは、当のパートさんかもしれません。苦情への返信や価格交渉のメモも同じ列に並びます。
2. 誰が何を入れたか分からない。 文章の間違いがSNSに出たとき、共用アカウントでは誰の作業か追えません。直す人も決まりません。
3. AIの「記憶」が混ざる。 最近のAIチャットは、過去の会話を覚えて次の回答に生かします。共用だと、企画担当が入れた未発表のイベント情報が、別の人のSNS投稿文に顔を出すことが起こりえます。共用アカウントは共有の引き出しではなく、全員の話を混ぜて覚える一つの頭です。
4. 止められない。 誰かが辞めても、パスワードを変えれば全員が困るので変えられません。二段階認証も設定した人のスマホに紐づいたままです。規約で共用を認めていないサービスもあり、履歴ごと使えなくなるおそれもあります。
履歴を社内で活かす3つの型
型1: 出力を渡す。 一番簡単で安全です。仕上がった文章と使った指示文を、共有フォルダやグループチャットに貼るだけです。
型2: 会話の共有リンクを使う。 その会話だけを他の人に見せるリンク機能があります。ただ、リンクを知っていれば誰でも開ける設定のものもあります。お客様の名前や社外秘が入った会話は、リンクでなく型1で渡します。
型3: 一人一席のチーム向けプランにする。 少人数向けの法人プランには、各自のIDで入り、指示文や資料を置ける共有スペースがあります。共有したいものは共有スペースへ、それ以外は本人だけ、という線引きが仕組みで守られます。8月の記事で触れた、個人プランを人数分寄せ集める弱点もここで解けます。
明日やれる一歩
明日、共用しているAIチャットの履歴一覧を上から20件、件名だけ眺めてください。「同僚に見られて困る」ものが1つでもあれば、共用をやめる理由は十分です。すぐ切り替えられないなら、当面のルールを2つ。人事・苦情・価格の相談は共用アカウントで行わない。記憶の機能は設定で切っておく。
履歴の共有はやめるものではなく、やり方を選ぶものです。「渡すのは結果、ログインは一人ひとつ」。この一行を決めておけば、安心して使い続けられます。