「データを活用したい」と考えたとき、多くの現場が最初にツール選びから入ります。ところが、うまく続いている施設を見ると、最初にやっているのは「何を決めたいか」の整理です。この記事では、新潟の道の駅や観光施設、6次産業の直売所を想定して、指標を測り始める順番を解説します。

「何を測るか」より先に「何を決めたいか」

指標は、判断のために存在します。たとえば次のような「決めたいこと」があるはずです。

  • 冬の閑散期に、営業時間や品ぞろえを変えるべきか
  • 連休に向けて、仕入れやスタッフを増やすべきか
  • 新商品の棚を、入口側に移すべきか

決めたいことが曖昧なまま数字を集めると、集計はできても行動が変わりません。最初の一手は、「今月決めたいこと」を1つ書き出すことです。指標はその判断に効くものだけを選びます。

指標は4段階の順に増やす

私が現場に近い立場で見てきた限り、順番を守るほど続きやすくなります。理由は、前の指標が安定しないと、次の指標の数字が信用できないからです。

段階 指標 取り方 分かること
① 来館者数 入口での手計測・カウンター 曜日・時間帯・天候による人の波
② 購買率 レジ通過数÷来館者数 来た人が買うところまで進んだか
③ 客単価 売上÷レジ通過数 1回の買い物の厚み
④ 再訪 スタンプカード・アンケート 季節を越えて戻ってくるか

売上だけを見ていると、「人が減ったのか、買わなくなったのか、安いものしか買われないのか」が区別できません。①〜③に分けると、原因の切り分けができます。④は取得に手間がかかるため、最後で構いません。

図1: 指標は来館者数、購買率、客単価、再訪の4段階の順に増やす

新潟の現場に置き換えるとどうなるか

新潟の施設は、季節差がはっきりしています。雪の時期と、夏の海沿い、秋の収穫期では、来館者の顔ぶれも買うものも変わります。そのため、①の来館者数は「日別」だけでなく「天気・気温・雪の有無」を一言メモで添えておくと、後から効いてきます。

チェックリストにすると次のとおりです。

  • 入口で数える人(または方法)が決まっている
  • レジ通過数を日ごとに控えている
  • 天気・イベント・団体バスの有無をメモしている
  • 数字を見る曜日と担当者が決まっている

6次産業の直売所なら、②の購買率が特に有用です。試食を出した日と出さない日で、購買率がどう動くかを比べれば、打ち手の効果が見えます。

現場でよくある判断ミス

よく見かけるのは次の3つです。

  1. 最初から指標を増やしすぎる。 10個の指標は、記録する負担で3週間もたずに止まりがちです。最初は2つ(来館者数と購買率)で十分です。
  2. ツール導入が先になる。 高機能な仕組みを入れても、入力する運用が決まっていなければ空のままです。まず紙や表計算で1か月試し、必要な項目が見えてからツールを選ぶほうが失敗しにくいです。
  3. 見て終わる。 数字を眺めて「なるほど」で終わると、翌月も同じ判断をします。見たら「打ち手を1つ決める」までをセットにします。

なぜこの順番を勧めるのか。データ活用の目的は、報告書を作ることではなく、現場の判断を1つ良くすることだからです。小さく測って小さく直す回数が多い施設ほど、数字への信頼も育ちます。AIと設計の型があれば、集計表や振り返りシートは自社で構築できます。難しいのはツールではなく、何を測るかを決める部分です。

図2: 指標設計のよくある始め方と、順番どおりに進める始め方の比較

明日やれる一歩

明日やることは3つだけです。

  1. 「今月決めたいこと」を1行で書く
  2. 開店から閉店まで、入口の来館者数を30分ごとに手で数える(またはレジ通過数を控える)
  3. 閉店後に、天気を一言添えて記録する

1週間続けると、曜日ごとの人の波が見えてきます。そこから購買率へ進めば、指標設計の最初の一歩は完了です。まずは数える1日から始めてみてください。