面接の質問リストをAIで作る基本の手順は、7月の記事で直売所のパート募集を例に紹介しました。実際に現場で使ってもらうと、次に出てくるのが「店長候補の面接にも同じリストでいいのか」という質問です。答えは「そのままでは足りない」です。パート向けのリストで店長候補を面接すると、「土日に入れますか」で話が終わり、肝心の「人を動かした経験」を聞かないまま採用してしまいます。今回は、役職ごとに質問リストを作り分ける型を、3つの役職を一度に作れるプロンプト全文つきで紹介します。
役職で変えるのは質問ではなく「見たいこと」
道の駅や観光施設の採用で出てくる役職は、だいたい3つの層に分かれます。レジや品出しを担う現場スタッフ、繁忙日の段取りを任せる現場リーダー、数字と人を預かる店長や部門責任者です。この3層で質問を変えるとき、質問文から考え始めるとうまくいきません。先に「この役職で見たいこと」を決め、質問はそこからAIに作らせます。
- 現場スタッフ: 勤務条件が無理なく続くか、お客様や生産者と気持ちよく話せるか、教わったことを素直にやれるか
- 現場リーダー: 人に仕事を頼めるか、忙しい日の段取りを組めるか、トラブルの初動を自分で判断できるか
- 店長・部門責任者: 売上や在庫の数字を見て手を打った経験があるか、人を採って育てた経験があるか、経営者と意見が違うときどう動くか
もうひとつ大事なのが、リストを「共通3問+役職別5問」の2階建てにすることです。共通の3問は勤務開始時期や前職を辞めた理由など、全役職に同じ文言で聞く質問です。これがあると、パートとリーダーの応募者を同じ物差しで比べられます。役職別の5問で深さを出し、共通の3問で横並びの比較を残す。この分け方が、小さな会社の面接には一番扱いやすいと感じています。
手順(5ステップ)
- 今回募集する役職を1つ選び、「その役職がいなくて一番困っている場面」を1行書く(例: 繁忙日に新人の配置を決められる人がいない)
- 上の一覧から、その役職で見たいことを3つ選び、自分の言葉に直す
- 下のプロンプトの【 】を埋めてAIに渡し、共通3問と役職別5問、追い質問を出させる
- 出てきた質問を「この役職に応募する人が実際に経験していそうか」の目で削る
- 役職ごとに1枚に印刷し、共通3問は全役職で同じ文言に揃える
手順1で「困っている場面」を先に書くのは、役職名だけ渡すとAIが一般的な管理職像で質問を作ってしまうからです。「主任」という肩書きでも、会社によっては発注の権限があったりなかったりします。困っている場面を1行書くだけで、質問がその会社の実態に寄ります。
プロンプト全文(3役職を一度に作る版)
あなたは中小企業の採用を手伝うアシスタントです。
以下の情報をもとに、採用面接の質問リストを役職別に作ってください。
【会社・職場】
新潟県内の道の駅。直売所と軽食コーナーを運営。スタッフ12名。土日祝と観光シーズンが繁忙。
【募集する役職と、いなくて困っている場面】
・現場スタッフ(パート): 土日の午後にレジと品出しを回せる人が足りない
・現場リーダー(主任): 繁忙日に新人の配置を決め、生産者からの電話に一次対応できる人がいない
・店長候補: 月次の売上と在庫を見て仕入れや売場を変える判断を、経営者以外に誰もできない
【役職ごとに見たいこと】
・現場スタッフ: 勤務条件が無理なく続くか/お客様や生産者と気持ちよく話せるか/教わったことを素直にやれるか
・現場リーダー: 人に仕事を頼めるか/忙しい日の段取りを組めるか/トラブルの初動を自分で判断できるか
・店長候補: 数字を見て手を打った経験/人を採って育てた経験/経営者と意見が違うときの動き方
【出力の形】
1. 全役職に同じ文言で聞く「共通質問」を3つ
2. 役職ごとに「役職別質問」を5つ。それぞれに「この質問で見たいこと」を1行添える
3. 役職別質問の各項目に、答えが浅かったときの「追い質問」を1つ添える
【条件】
・「はい/いいえ」で終わらず、過去の具体的な経験を聞く形にする
・その役職に応募する人が実際に経験していそうな場面で聞く(パートに部下の評価の話は聞かない)
・応募者が答えやすい、やさしい言葉にする
・出身地、家族構成、配偶者の有無、思想信条、健康状態など、仕事の適性に関係ない質問は入れない
・役職が上がっても上の禁止は同じ
出力のイメージと、役職別質問の見方
現場リーダー向けには、たとえば「忙しい日に、自分より経験の長い人に仕事を頼んだことはありますか。どう頼みましたか」といった質問が出てきます。追い質問は「頼んだあと、うまくいかなかったことはありますか」のような形です。店長候補向けには「数字を見て売場や仕入れを変えたことがあれば、何の数字を見て、何を変えたか教えてください」が出ます。
見るべきは質問の立派さではなく、「その役職の人が答えられる場面か」です。AIは店長候補に「経営理念をどう浸透させますか」のような質問も混ぜてきますが、道の駅の店長候補の多くは、そういう言葉で仕事をしていません。「朝礼で何を話していましたか」に言い換えたほうが、同じことを具体的に聞けます。
現場でよくある落とし穴
ひとつめは、役職名で質問を決めてしまうことです。「主任」を募集していても、実際の権限が「シフトの相談役」程度なら、リーダー向けの質問は重すぎます。逆に、肩書きはパートでも実質的に売場を任せたいなら、リーダーの質問を混ぜます。役職名でなく、任せたい権限で選んでください。
ふたつめは、役職が上がると聞いてはいけない質問に手が伸びることです。管理職候補には「家庭と両立できますか」と聞きたくなりますが、家族構成や配偶者の有無に踏み込む聞き方は、厚生労働省が採用選考で避けるよう求めている項目に当たります。聞きたいのは「繁忙期に週何日、何時まで働けるか」という勤務条件のはずなので、そのまま勤務条件として聞きます。この確認だけは、8月の記事でも書いたとおりAIに任せず人がやります。
みっつめは、内部昇格の面談に外部採用のリストをそのまま使うことです。社内の人には「前職で」ではなく「うちの店で」の経験を聞けます。プロンプトの【募集する役職】に「社内からの昇格候補」と1行足すだけで、質問の聞き方が変わります。
明日やれる一歩
次に募集しそうな役職を1つ選び、「その役職がいなくて一番困っている場面」を1行だけ書いてください。募集の予定がなくても構いません。この1行があれば、プロンプトの残りは上の一覧から選ぶだけで埋まります。役職ごとに聞くことが決まっている面接は、応募者にとっても「この会社は自分に何を期待しているか」が伝わる場になります。