値札の「ひとこと」は、商品名より先に読まれる
道の駅や直売所に新商品が入ったとき、真っ先に用意するのは値札です。ところが値札には商品名と価格しか書かれていないことが多く、初めて見るお客さんには「これは何で、どう食べるのか」が伝わりません。棚の前で3秒迷って、隣の知っている商品に手が伸びる。新商品が動かない理由の多くは味ではなく、この3秒にあります。
そこで効くのが、価格の横に添える12字以内の「ひとことコピー」です。野菜のPOPについては以前「産直野菜のPOPをAIで量産する時短プロンプト」で紹介しましたが、今回は新商品の値札に絞ります。野菜と違い、新商品は加工品やお土産が中心で、棚に長く並びます。しかも値札のスペースは名刺より小さい。長い説明文ではなく、短い一言を何案も出して選ぶ、という作り方が向いています。
先に「商品カルテ」を5行書く
AIに書かせる前に、商品ごとに次の5行を用意します。これが事実の元帳になります。
【商品カルテ】
商品名:
中身の事実:(原材料・産地・製法。表示ラベルに書いてあることだけ)
作り手のひとこと:(作った人が実際に言った言葉)
おすすめの食べ方:
買ってほしい相手:
5行のうち「中身の事実」だけは、パッケージの表示ラベルを見ながら写してください。AIに商品名だけ渡すと、書いていない産地や「無添加」「手作り」といった言葉を想像で足してしまいます。食品の表示には決まりがあり、値札に書いた一言でも表示の一部として見られることがあります。事実は人が書き、言い回しをAIに任せる。この分担が値札では特に大切です。
ひとことコピーの「5つの型」
短い一言は、伝えることを1つに絞るほど強くなります。型を5つ決めておき、型ごとに1案ずつ出させると、案の幅が自然に広がります。
- 食べ方型:「炊きたてにのせるだけ」
- 相手型:「お酒好きのお父さんに」
- 素材の事実型:「県内産の大豆だけで」
- 季節・限定型:「今年の秋の分だけ」
- 作り手の声型:「うちの母の味そのまま」
型を指定せずに「いいコピーを10案」と頼むと、似た案が10個並びがちです。型を分けると、同じ商品でも「誰に・何を」の切り口が変わり、選ぶ側も比べやすくなります。
そのまま使えるプロンプト全文
商品カルテを埋めたら、以下を貼り付けて使います。ChatGPT、Gemini、Claudeのどれでも動きます。商品は一度に5点くらいまでが扱いやすい量です。
あなたは新潟の道の駅で新商品の値札を書く販売担当です。
以下の商品カルテをもとに、値札に添える「ひとことコピー」を作ってください。
【条件】
・1商品につき、次の5つの型で1案ずつ、計5案
1 食べ方型 / 2 相手型 / 3 素材の事実型 / 4 季節・限定型 / 5 作り手の声型
・1案は12字以内。句点は付けない
・商品カルテに書いていない産地・製法・効能は書かない
・「絶対」「日本一」「究極」など大げさな言葉は使わない
・「無添加」「手作り」「無農薬」は、カルテの「中身の事実」にある場合だけ使う
・出力は表形式。列は「商品名/型/コピー/文字数」
【商品カルテ】
商品名:
中身の事実:
作り手のひとこと:
おすすめの食べ方:
買ってほしい相手:
(商品が複数ある場合は、カルテを続けて貼る)
出てきた表から、商品ごとに「値札に書く1案」と「2週間後に差し替える1案」の2つを選びます。表に文字数の列を入れているのは、12字を超えた案を迷わず外せるようにするためです。
値札ならではの落とし穴
- 12字を超えると2行になる。手書きの値札もラベルシールも、2行になると読まれる率が落ちます。名文より、1行に収まる短さを優先してください。
- よく似た商品に同じ切り口のコピーを付ける。「味噌(甘口)」と「味噌(辛口)」のように並ぶ商品は、片方を食べ方型、もう片方を相手型にすると棚の上で見分けがつきます。
- 出てきた案をそのまま貼る。「県内産の大豆」と書いたのに実際は一部だけ、という事故はAIではなく人の確認で防ぎます。値札に書く前に、カルテの「中身の事実」と1回だけ見比べてください。
- 1案で決め切る。新商品は反応が読めません。まず1案で2週間並べ、もう1案に差し替えて手に取られ方を見る。この差し替えができるのは、AIで案を余らせておけるからです。
なぜカルテ→型→量産の順番なのか
先にAIへ商品名だけ投げると、それらしい案は出ますが、事実の確認を後から全案に対して行うことになります。カルテを先に書けば、確認は書く前の1回で済み、AIはカルテの範囲でしか書けなくなります。型を先に決めるのも同じ理由で、出た案を後から分類するより、出す前に切り口を分けた方が手戻りがありません。手間の順番を入れ替えるだけで、量産した案を捨てる量が減ります。
商品カルテは値札だけの資料ではありません。以前紹介した「商品説明文をEC・POP・SNSに一括変換するプロンプト」の入力にもそのまま使えますし、新しく入ったスタッフが商品を覚える教材にもなります。
明日やれる一歩
明日やるのは、いちばん新しい商品を1つ選んで商品カルテの5行を書くことだけです。「作り手のひとこと」が埋まらなければ、納品に来た作り手に「この商品、ひとことで言うと何ですか」と聞いてみてください。その一言がそのまま、5つの型の中でいちばん強いコピーになることがよくあります。カルテが1枚できれば、残りの商品はAIと設計の型があれば自社で量産できます。