AIの"中身"そのものが、誰でも持ち出せる形で配られる——。中国のAI企業Moonshot AI(ムーンショットAI)が、AIモデル「Kimi K3」の中身にあたるデータを本日7月27日に公開すると予告しており、史上最大規模のオープン公開になると複数の海外メディアが報じています。

AIの頭脳データを無償で配る「オープンウェイト」

Kimi K3は7月16日からアプリなどで使えるようになっていたAIで、性能は米国のトップ級モデルに迫ると報じられています。今回配られるのは「ウェイト」と呼ばれる、AIの頭脳にあたるデータそのものです。誰でもダウンロードして自分のサーバーで動かせる形の公開を「オープンウェイト」と呼び、Kimi K3の規模(パラメータ数2.8兆)はその中で史上最大とされています。

ただし、配られるデータの大きさは約1.4テラバイト。動かすには高性能な専用サーバーが何台も必要で、手元のパソコンでどうにかなる話ではありません。

図1: Kimi K3オープンウェイト公開の規模。2.8兆パラメータ・約1.4TBで、動かすには専用サーバーが複数台必要

「開放」の恩恵は、間接的に届く

巨大な倉庫が無料開放されても、軽トラック1台では運び出せない——今回の話はこれに近い構図です。新潟の道の駅や観光の現場が、この巨大AIを自前で動かすことは現実的ではありません。それでも無関係ではない理由が2つあります。

良い面は、価格と選択肢です。中身が公開されると、それを土台にサービスを作る会社が世界中に増えるため、AIサービス全体の競争が進みます。月額料金の値下がりや新しい選択肢という形で、巡り巡って小さな会社の払う金額にも影響してきます。

注意したい面は、「オープン=無料で安心」ではないことです。Kimi K3は、商用利用してよいかどうかの条件(ライセンス)が中身の公開時に発表される予定で、記事執筆時点では未確定と報じられています。また、アプリ経由で使う場合、入力したデータがどこの国のどのサーバーに渡るのかは、オープンかどうかとは別の問題として残ります。

図2: オープン公開で変わること・変わらないことの○×表。ダウンロードは無料になるが、商用条件は未確定で、恩恵は間接的に届く

明日やれる一歩:使っているAIの「産地」を調べる

道の駅の売り場で産地表示を確かめるように、AIツールにも「どこの会社が作り、データがどこへ行くのか」という産地があります。選択肢が増える時代は、選ぶ側の目利きが要る時代でもあります。

明日やれる一歩として、いま業務で使っているAIツールの名前に「運営会社」を付けて検索し、どこの国のどの会社のサービスなのかを一度確かめてみてください。5分で終わります。無料や安さをうたう新しいAIは、これからも次々に現れます。「安いから」だけで選ばないための、最初の目利きの練習です。