質問が「まだ集まっていない」ときのFAQの作り方

以前、電話や店頭で実際に聞かれた質問を集めてから、AIに整理と清書を頼む半日の手順を紹介しました。ただ、この順番が使えない場面があります。新しい売場や体験プログラムを始めるとき、そもそも問い合わせを記録する習慣がなかったとき。材料になる質問がなく、集めるところから始められません。

そこで順番を逆にします。AIに「お客様の立場で聞きそうな質問」と回答案を先に出させ、それを叩き台として人が事実で削っていく作り方です。叩き台があれば、スタッフに「これで合っていますか」と聞くだけで済み、白紙から質問を思い出してもらうより短い時間で形になります。

手順は4つです。

  1. 事実シートを作る(30分)
  2. AIに質問候補を出させる(15分)
  3. AIに回答案を書かせる(20分)
  4. 叩き台シートに落として人が確認する(60分)

図1: FAQの叩き台をAIで作る4ステップの流れと、人がやる工程とAIに任せる工程の分担

手順1: 事実シートを作る

最初にやるのはAIへの指示ではなく、自社の事実を1枚にまとめることです。営業時間、定休日、駐車場の台数、支払い方法、ペットや大型バスの可否、雪の時期の営業、地方発送の有無。道の駅や直売所なら、この7項目で大半の質問に答えられます。

ここを飛ばしてAIに頼むと、AIは「一般的な道の駅」の営業時間や設備をそれらしく埋めてしまいます。事実シートは、AIが勝手に想像する範囲を狭めるための柵です。分からない項目は空欄のままで構いません。空欄はあとで【要確認】として残ります。

手順2: AIに質問候補を出させる

事実シートができたら、次のプロンプトで質問候補を出させます。ポイントは、お客様を4つのタイプに分けて考えさせることです。

あなたは【道の駅◯◯】に初めて来るお客様です。
以下の施設情報を読んだうえで、来る前や到着後に聞きたくなる質問を
お客様のタイプ別に5個ずつ、話し言葉で書き出してください。

【お客様のタイプ】
A. 小さな子ども連れの家族(車で来る)
B. 団体バスの幹事・添乗員
C. 海外からの観光客(日本語は読めない前提)
D. 農産物や加工品を仕入れたい事業者

【施設情報】
(事実シートを貼り付け)

【守ること】
・施設情報に答えが書かれていない質問も遠慮なく出す(抜けに気づくため)
・「こだわりは何ですか」のような宣伝向けの質問は出さない
・質問文は「大型バスは停められますか?」のように、お客様が口にする言い回しにする

タイプ分けをする理由は、経営者やスタッフが思いつく質問が「いつものお客様」に偏るからです。団体バスの幹事は「トイレの数」や「滞在時間の目安」を聞き、仕入れ事業者は「ロット」や「納品書」を聞きます。自分では出てこない質問が、タイプを変えるだけで出てきます。

「答えが書かれていない質問も出す」と指定するのは、答えられない質問がそのまま事実シートの抜けリストになるからです。

手順3: AIに回答案を書かせる

質問候補から載せるものを選んだら、回答案を書かせます。

あなたは【道の駅◯◯】のスタッフです。
以下の質問それぞれに、ホームページの「よくある質問」用の回答案を書いてください。

【施設情報】
(事実シートを貼り付け)

【守ること】
・回答は2〜3文。結論を最初の1文で言い切る
・施設情報にないことは推測で書かず、回答欄に【要確認】とだけ書く
・季節や天候で変わることは「〜の場合があります」と幅を持たせる
・各回答の末尾に、施設情報のどの行を根拠にしたかを(根拠: ◯◯)の形で添える

【質問リスト】
(手順2で選んだ質問を貼り付け)

以前の記事のプロンプトと違うのは、最後の「根拠を添える」指定です。叩き台は人が確認する前提の文章なので、確認する人が「この回答はどの事実から来たのか」を一目で追えるようにしておきます。根拠が空の回答は、AIが補ったものだとすぐ分かります。

手順4: 叩き台シートに落として人が確認する

AIの出力をそのままページにせず、表計算ソフトに「質問/回答案/根拠/状態」の4列で貼り直します。状態の列は「OK・修正・要確認・不採用」の4つから選ぶだけにして、電話番やレジ担当のスタッフに回します。

確認する人の仕事は文章を書くことではなく、状態の列を埋めることです。回答が事実と違えば「修正」と書いて正しい内容をメモし、答えを知らなければ「要確認」のまま次の人に回す。この形にしておくと、忙しい現場でも空き時間に10分ずつ進められます。

図2: 叩き台シートの4列(質問・回答案・根拠・状態)と、状態欄の4つの選択肢

現場でよくある落とし穴

  • AIの質問候補を全部載せてしまう。 20個出てきても、載せるのは「実際に聞かれそう」とスタッフが思うものだけです。候補は多く出して、載せる数は絞ります。
  • 回答案をそのまま公開する。 根拠の付いていない回答は、事実シートにない話をAIが補った可能性があります。状態がOKになった行だけを公開します。
  • 叩き台を作った人が確認もする。 作った本人は文章に慣れてしまい、間違いに気づきにくくなります。確認は別のスタッフ、できれば現場で電話を取っている人に頼みます。

事実シートを先に作るのは、AIの想像を止めるためです。質問候補を回答より先に出させるのは、答えられない質問を早く見つけて事実シートの抜けを埋めるためです。そして叩き台をシートに落とすのは、確認作業を「書く」から「選ぶ」に変えて、現場の負担を下げるためです。

明日やれる一歩

まず着手するのは手順1の事実シートです。営業時間、定休日、駐車場、支払い方法、ペット、大型バス、地方発送の7項目を、明日30分で書き出してみてください。分からない項目は空欄で結構です。その空欄こそが、今のホームページで答えられていない質問の正体です。

事実シートが1枚あれば、質問候補と回答案はAIが短時間で出してくれます。FAQページ作りを、書く仕事から選ぶ仕事に変えるところから始めてみてください。