告知文は「事実は1つ、顔は3つ」で作る

以前紹介した「イベント告知文をAIと一緒に作る型」では、イベントの事実と届けたい相手を分けて渡すことで、読み手目線の告知文を1本作る方法を書きました。今回はその続きです。実務では、告知文は1本では終わりません。チラシ、SNS、ホームページのお知らせと、少なくとも3つの顔が要ります。

この3つを別々の日に別々の人が書くと、チラシは「10時開始」なのにSNSは「9時半開始」のような食い違いが起きます。原因は書き手の注意不足ではなく、同じ事実を3回書き写す作業そのものにあります。そこで、事実は1回だけシートに書き、媒体ごとの書き分けはAIにまとめてやらせる。これが本記事の型です。

ただし、3媒体は文字数が違うだけではありません。役割が違います。チラシは手に取って持ち帰るもので、電話番号や地図まで全部載せます。SNSは「行ってみようかな」というきっかけを作る一言と写真です。サイトは検索してきた人の受け皿で、最新情報を置く場所です。この役割の違いをプロンプトに書いておくと、3本が「同じ文章の長さ違い」にならずに済みます。

図1: 事実シート1枚をAIが3媒体に書き分ける構成図。チラシは持ち帰る全部載せ、SNSはきっかけの一言と写真、サイトは検索の受け皿で最新情報の置き場として「正」にする

手順:事実シート1枚から3媒体を作る5ステップ

  1. 事実シートを埋める。 名称、日時、場所、内容、駐車場、雨天時の扱い、予約の要否、問い合わせ先を箇条書きにします。ここで一つ加えるのが、「まだ変わるかもしれない項目」に※印をつけることです。出店者の顔ぶれや当日の時間割は、直前まで動くことが多いはずです。
  2. 媒体ごとの役割と枠を決める。 チラシはA4片面で何字まで入るか、SNSは冒頭の1行で止まってもらえるか、サイトには見出し・本文・アクセス・よくある質問を置くか。文字数と役割を先に決めて、プロンプトに書き込みます。
  3. プロンプトを実行する。 下の全文を貼り、【事実シート】だけ自分のイベントに書き換えます。
  4. 検品する。 見るのは、日付と曜日、開始時刻、電話番号、そして「※印の項目がチラシに入っていないか」の4点です。文章の上手さは後回しで構いません。
  5. 出す順番を守る。 先にサイトのお知らせページを公開し、そのURLを載せたチラシを入稿し、最後にSNSで予告します。チラシやSNSから「詳しくはサイトへ」と案内できるのは、サイトが先に存在しているときだけです。

そのまま使えるプロンプト全文

あなたは新潟の道の駅の広報担当です。
以下の【事実シート】だけを根拠に、【媒体ごとの条件】に沿って
イベント告知文を3種類作ってください。
シートにない情報は推測で足さず、「要確認」と書いてください。

【事実シート】
・名称:秋の新米まつり
・日時:10月18日(日) 10時〜15時 ※雨天決行、荒天中止
・場所:道の駅の屋外広場(住所:〇〇市〇〇 1-2-3)
・内容:新米の食べ比べ、枝豆のつかみ取り、地元農家の直売
・時間割:11時 餅つき、13時 じゃんけん大会 ※変更の可能性あり
・出店者:地元農家8軒 ※変更の可能性あり
・駐車場:無料80台 ・予約:不要 ・入場:無料
・問い合わせ:電話 025-000-0000(9時〜17時)
・詳細ページ:https://example.jp/event/shinmai

【届けたい相手】
・車で30分圏内の家族連れ。初めて来る人にも分かるように

【媒体ごとの条件】
1. チラシ(A4片面)
   見出し15字以内、本文200字以内、末尾に日時・場所・駐車場・
   問い合わせ先の一覧。※印の項目は載せず、
   「最新情報は詳細ページへ」の一文とURLを入れる
2. SNS投稿(Instagram・Facebook共通)
   冒頭1行で「行きたくなる1点」を書き、本文120字以内、
   ハッシュタグ5個、添える写真の案を1行
3. サイトのお知らせページ
   見出し、本文300字以内、アクセスと駐車場の段落、
   よくある質問3つ(雨天・予約・支払い方法)、
   末尾に「更新日:」の行

【共通ルール】
・日付には曜日をつける
・「絶対」「必ず」などの誇張表現を使わない
・最後に、3媒体で日時・場所・電話番号が一致しているかの
  チェック表を出す

最後のチェック表がある分、人の検品は1分で終わります。この例では※印の項目は時間割と出店者です。チラシからは外れ、サイトには「変更の場合はこのページで案内します」の形で載ります。

現場でよくある落とし穴

チラシに時間割と出店者を全部載せる。 印刷したチラシは直せません。出店者が1軒減っただけで、刷り直すか、間違ったチラシを配り続けるかの二択になります。※印の項目をチラシから外し、「詳しくはサイトへ」に置き換えるのはこのためです。

SNSがチラシの縮小コピーになる。 チラシの文章を短くしただけの投稿は、流れていく画面で止まってもらえません。SNSに必要なのは全部の情報ではなく、「枝豆のつかみ取り、今年もやります」のような1点と、自分で撮った写真1枚です。

サイトに今年の告知ページがない。 去年のイベント名で検索されて、去年の告知が出てくる。観光施設でよく起きる事故です。今年のページを更新日つきで1枚作り、チラシとSNSからそこへ集めるだけで防げます。

図2: 3媒体一括生成で現場によくある落とし穴と対策の対応表。チラシに変わる情報を載せない、SNSは行きたくなる1点と写真に絞る、サイトに更新日つきの告知ページを作って全媒体から集める

なぜ「サイトを正」にするのか

3媒体は、あとから直せる順に並びます。サイトはいつでも直せます。SNSは訂正投稿はできますが、元の投稿は流れたまま残ります。チラシは配った瞬間から直せません。だから、変わりうる情報は直せる場所にだけ置き、直せない媒体には「直せる場所への案内」を載せる。3媒体を一括で作るとき、文字数の指定より大事なのはこの設計です。

もう一つ、事実シートに※印をつける作業には副産物があります。※印が多すぎるイベントは、まだ告知の時期ではないということです。印をつけながら「これは今週中に決めないと告知できない」と気づけるのは、文章より先にシートを書くからです。

6次産業の事業者なら、加工場の見学会や収穫体験にもそのまま使えます。事実シートに「持ち物」「対象年齢」「定員と締切」を足せば、予約制のイベントにも対応できます。

明日やれる一歩

次のイベントの事実シートを、上のプロンプトの形で書いてみてください。そして、まだ決まっていない項目、変わるかもしれない項目に※印をつける。ここまでで10分です。プロンプトを動かすのはその後で構いません。※印の数が、告知に踏み切れるかどうかの目安になります。