「丁寧に」と頼むと、なぜ謝りすぎるのか

クレーム返信の下書きをAIに頼むと、文面がやたらと重くなることがあります。「深く反省しております」「心よりお詫び申し上げます」が並び、事実確認もまだなのに全面降伏のような下書きになる。逆に「簡潔に」と頼むと、今度は事務的で冷たい。原因は指定のしかたにあります。「丁寧に」は文の形の指定であって、感情の指定ではないからです。

書いてはいけない内容の線引きは7月27日の記事で、返信までの手順は8月21日の記事で扱いました。今回は「どんな気持ちを、どの強さで文にのせるか」だけに絞ります。

図1: 「丁寧に」は謝りすぎ、「簡潔に」は冷たい。共感・お詫び・温度の3つに分けて指定すると落ち着いた下書きになる

感情表現は3つのつまみに分けて指定する

感情の指定は、次の3つに分けると伝わります。

  1. 共感の深さ:相手の気持ちをどこまで言葉にするか
  2. お詫びの重さ:不快にさせたことへのお詫びか、非を認める謝罪か
  3. 文の温度:かしこまった距離感か、顔の見える近さか

観光案内所に「案内が不親切で予定が台無しになった」というメールが届いた場面で書くと、こうなります。

以下のクレームメールへの返信の下書きを作ってください。

【感情表現の指定】
- 共感:楽しみにしていた旅行が台無しになった悔しさを、
  1文だけ相手のメールの言葉を使って受け止める。
  「お気持ちお察しします」のような決まり文句は使わない
- お詫び:不快な思いをさせたことへのお詫びは書く。
  「反省」「不手際」「至らず」など、こちらの非を認める語は
  使わない(事実確認がまだのため)
- 温度:かしこまりすぎない。担当者の顔が見える「私」の一人称で
  書く。ただし友達口調にはしない
- 感情の言葉は最初の3行に集め、後半は事実確認と今後の連絡だけを
  淡々と書く

【お客様のメール】
(ここに貼り付け)

なぜこの書き方が効くか

効いているのは、感情の言葉の「主語」を分けている点です。「ご予定が台無しになり、さぞお困りだったと思います」は主語が相手で、事実確認前でも書けます。一方「私どもの不手際で」は主語がこちらで、非を認める文になります。AIは頼まれると謝罪の言葉を増やしがちで、増えるのは決まってこちらが主語の文です。だから禁止する語を具体的に列挙しておくと、下書きの段階で止まります。

もうひとつは、感情を前半3行に閉じ込める指定です。お詫びが文面全体に散らばると、読む側は「結局どうしてくれるのか」が見えません。前半で気持ちを受け止め、後半は事実と期日だけ。この配置のほうが、謝罪の言葉が多い文より落ち着いて読めます。

図2: 感情の言葉は相手を主語に、非を認める言葉はこちらが主語になるので事実確認前は使わない。感情は前半3行、後半は事実と期日

明日やれる一歩

上の【感情表現の指定】の部分をコピーし、共感・お詫び・温度の3行を自分のお店の言葉に書き換えて保存しておきましょう。「決まり文句を使わない」の一行だけでも、下書きの温度が変わります。