集計しやすさは、設問を書く前に決まる

秋の収穫祭が終わり、レジ横の回収箱にアンケートが百枚ほど溜まった。いざ集計しようとすると、「満足度」の設問は左が「とても満足」なのに、次の設問は左が「不満」。来訪目的は複数に丸が付いていて、自由記述は3問もあって読み切れない。こうなると、集計の前に「この回答をどう数えるか」を決め直す作業が発生します。

集計しやすいアンケートとは、答えがそのまま表の1列に収まるアンケートのことです。それは設問文の上手さではなく、設問を書く前に「何を決めたいか」と「表の列」を決めているかで、ほぼ決まります。AIはこの型を渡せば、設問案を数分で組み立ててくれます。

AIに渡す材料は3つ

設問を頼む前に、次の3つを書き出します。

  1. この結果で決めたいこと。「来年も収穫祭を同じ規模でやるか」「直売コーナーで増やす品目」など、3つ以内に絞ります。決めることが無い項目は、聞いても使いません。
  2. 回答の場面。紙かQRコードか、会計後に2分で書けるか、回答者は年配の方が多いか。設問の長さと選択肢の数が変わります。
  3. 集計表の列名。「回答日/来訪回数/居住地/来訪目的/総合満足度/自由記述」のように、先に表の見出しを書きます。この列が、そのまま設問の数と順番になります。

図1: 決めたいこと・回答の場面・集計表の列名の3つをAIに渡し、1設問が1列に対応する設問案を作る流れ

手順(5ステップ)

  1. 決めたいことを3つ以内で書く。
  2. 集計表の列名を書く。列が10を超えたら、決めたいことに直結しない列を削る。
  3. 下のプロンプトに1と2を埋めて、AIに設問案を出させる。
  4. 出てきた案を、AIに「集計担当の立場」で点検させる(追い質問は後述)。
  5. 職場の5人に試しに答えてもらい、迷った設問と所要時間を確かめて直す。

そのまま使えるプロンプト全文

あなたはアンケート設計の担当者です。以下の条件で、お客様アンケートの設問案を作ってください。

【この結果で決めたいこと】
1. 秋の収穫祭イベントを来年も同じ規模でやるか
2. 直売コーナーの品ぞろえで増やす品目
3. 県外のお客様向けの案内(看板・SNS)をどこに力を入れるか

【回答の場面】
- 会計後、レジ横で紙に記入。所要時間は2分以内
- 回答者は家族連れと年配の方が多い。県外のお客様も3割ほど
- 集計はスマホ撮影→AIで表にする(手書きは選択肢の丸付け中心にしたい)

【集計表の列(この順に1列ずつ対応する設問にする)】
回答日 / 来訪回数 / 居住地 / 来訪目的 / 購入した品目 / 総合満足度 / 再来訪意向 / 増やしてほしい品目 / 自由記述

【守ること】
- 設問は10問以内。1設問=1列になるようにする
- 選択式を基本にし、自由記述は最後の1問だけ
- 選択肢は互いに重ならないようにし、「その他」は1設問に1つだけ置く
- 満足度・意向の尺度は全設問で同じ段階数・同じ向き(左が良い)にそろえる
- 複数回答が必要な設問には(複数可)と明記し、それ以外は1つだけ選ぶ形にする
- 専門用語・社内用語を使わず、はじめて来た人にも分かる言葉にする
- 出力は「設問番号 / 設問文 / 回答形式(単一・複数・尺度・記述) / 選択肢 / 対応する列名」の表

【決めたいこと】と【集計表の列】は、自社の内容に差し替えてください。案が出たら、続けてこう頼みます。

この設問案を、集計担当の立場で点検してください。
「集計するときに困る設問」を挙げ、理由と直し方を1行ずつ書いてください。
点検の観点: 選択肢の重なり/複数回答と単一回答の混在/尺度の向きの不一致/答えにくい設問/10問超え

設問案を見るときの「集計しやすさの型」5つ

AIの案が返ってきたら、次の5つで点検します。AIも最初から全部は守れないことがあるので、人の目で確かめる基準です。

  • 単一回答が基本。複数回答は「購入した品目」のように、1人が複数選んでも数えるときに困らない設問だけに限ります。
  • 選択肢は重ねない。「家族と」「子どもと」が両方あると、どちらに丸が付くかが人によって変わります。「その他」は1設問に1つです。
  • 尺度は全設問で同じ。5段階なら全部5段階、左が良い側なら全部左。向きが混ざると、集計時に片方を反転する手間と間違いが生まれます。
  • 自由記述は最後に1問。「他にお気づきの点があればご自由に」だけ残します。書きたい方はここに全部書いてくれます。
  • 属性は末尾に。居住地や年代を最初に聞かれると身構える方がいます。答えやすい「今日の目的」から始めて、属性は最後にまわします。

図2: 集計しにくいアンケートと集計しやすいアンケートを、選択肢・尺度・自由記述・設問数の4点で比べた表

現場でよくある落とし穴

知りたいことを全部盛る。担当者が集まると「せっかくだから」と設問が増え、12問、15問と伸びます。会計後の2分で答えられるのは、選択式で10問までが目安です。設問が増えるほど、回収率と後半の記入率が下がります。

自社の言葉で選択肢を作る。「6次化商品」「加工品コーナー」は現場の呼び名で、お客様には通じません。プロンプトに「はじめて来た人に分かる言葉で」と書いておくと、「ジャムやお菓子などの加工品」のように直してくれます。

1つの設問に2つのことを聞く。「満足していただけましたか、また来たいと思いますか」は、満足したけれど遠くて来られない方が答えられません。満足度と再来訪意向は列を分けます。

なぜ「列を先に決める」のか

設問から考え始めると、聞きたいことは無限に出てきます。列から始めると、「この列は何を決めるために要るのか」と自問することになり、設問が自然に絞られます。集計表の見出しが、設問の数の上限になるわけです。

もう一つの理由は、後工程との相性です。7月の記事で紹介した、紙のアンケートをスマホ撮影でデータ化する手順は、丸付けの選択式が多いほど誤読が減ります。8月の記事で紹介した自由記述のAI分類も、自由記述が最後の1問にまとまっていれば、そこだけを貼れば済みます。設計の段階で集計しやすくしておくことは、後の2つの作業を軽くすることでもあります。

明日やれる一歩

まず着手するのは手順の1、「この結果で決めたいこと」を3つ書くことです。紙1枚に書き出すだけなので、10分で終わります。あわせて、今使っているアンケート用紙の設問を書き写し、上の追い質問だけをAIに投げてみてください。「集計するときに困る設問」が2つ3つ返ってくるはずで、それが次に印刷する用紙で直す箇所になります。新しく作り直す前に、いまの用紙の点検から始めるのが、いちばん軽い一歩です。